副題「フェイクニュース  ネット炎上 情報の偏り」、勁草書房、2022年。

第1章 社会の分断と情報の偏り
第2章 フェイクニュースと社会
第3章 日本におけるフェイクニュースの実態
第4章 ネット炎上・誹謗中傷のメカニズム
第5章 データから見るネット炎上
第6章 ソーシャルメディアの価値・影響
第7章 ソーシャルメディアの諸課題にどう対処するのか

なんとか解体全書とか書いてある本で、ほんとうに網羅的な本って見たことがないかもしれないが、この本はこの領域に関する話題を広く扱っていて、良い意味で教科書的な、便利な一冊になっている。

  • SNSでは極端な意見が多く投稿され、憲法改正の例では「非常に反対」「絶対に反対」の人たちは14%しかいないが、投稿回数は46%にのぼる。(25)
  • 〔フェイクニュースによる殺人の例、インドやメキシコ。いずれも、「人さらいギャングが入国した」「子どもを誘拐した犯人だ」というフェイクニュースに対して、防衛的な対応から殺人に及んでいる〕(41)
  • イギリスのケント大学の指摘、陰謀論が広まる理由。(1)知識への欲求、(2)安心したい欲求、(3)「人のもっていない情報を知っている」とぃう優越感への欲求(47)
  • FIJのニュースの信頼性レーティング(74)、正確:事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていてない、ほぼ正確:一部不正確だが、主要な部分に誤りはない、ミスリード:一見事実とは異ならないが、誤解の余地が大きい、不正確: 正確・不正確な情報が混じり、全体としては不正確、根拠不明:誤りと証明できないが、証拠や根拠が乏しい、誤り:重要な部分に事実の誤りがある、虚偽:重要な誤りを含むことを知りながら伝えた疑いが濃厚、判断留保:真偽の証明が困難、誤りの可能性が否定できない、検証対象外:意見や主観的な評価であり、真偽を証明できない(74)https://fij.info/introduction/guideline
  • 新聞の閲覧時間が長かったり、マスメディアの信頼度が高いとフェイクニュースを信じにくいという指摘(111)
  • スーパースプレッダーはごくごく一部
  • ファクトチェックの限界(277-279):(1)真実のニュースは普及しにくい、(2)なにが「真実か」は個人の判断がともなう、(3)中立性の確保が難しい、(4)事業の安定的な継続が難しい、(5)強く信じている人にファクトを提示しても反発する(逆効果)

[J0306/221019]