ちくまプリマー新書、2022年。

第1章 そもそも「信じる」とは、どういう行為なのか
第2章 神を「信じ」ているとき、人はそれをどう語るのか
第3章 この世には悪があるのに、なぜ神を「信じ」られるのか
第4章 同じ宗教を「信じ」ていれば、人々は仲良くできるのか
第5章 神を「信じ」たら、善良な人間になれるのか

章のタイトルが内容をよく表しており、「神を信じる」ことに関するステレオタイプな誤解を、ていねいな説明でもって解いている点で良書。

以下のコメントは、実際には不可能なないものねだり。

まず、宗教なるものに懐疑的な人が読んだとして、現にいま信じている人の考えについては理解が深まるとしても、「なぜそもそも信じるのか」という疑問は解消しないだろうと思う。もっとも、そんなこと答えられないわけだが、溝は溝としてなんとか説明できないか(これは本書にではなく、一般的な課題として書いている)。

本書に対するよりストレートなコメントとしては、宗教を説明しているといいつつ、ほぼすべてキリスト教なんだよね。分量などの問題を度外視して言えば、すくなくとも、宗教としてのキリスト教の特殊性の説明は必要になってくる。とくに、日本における宗教懐疑論者は、日本の神道や仏教の伝統には比較的肯定的な一方で、キリスト教やイスラームの「外来宗教」に対して疑問を投げかけるケースが多い。これも、新書一冊に負わせるにむりがあるのだけど、宗教の民俗的側面・慣習的側面も説明できたらとおもうし、個人主体における信仰だけを扱っていると、いま話題の宗教二世問題も抜け落ちてしまう。

いずれにしても、よくある誤解を相手に宗教を説明していく本書の試みは、これをさらに深めていきたい有益な試み。

[J0326/230107]