副題「貧困・校内暴力・いじめから、不登校・発達障害問題まで」、中公新書、2023年。

1 敗戦後、学校はどう改革されたか
2 混乱の子どもたち―学校と人権
3 教育の五五年体制―文部省対日教組
4 財界の要求を反映する学校教育
5 高度経済成長下、悲鳴を上げる子どもたち
6 一九七〇年前後の抵抗運動―教育の可能性
7 ウンコまで管理する時代
8 政治主導の教育―新自由主義改革への道
9 教師たちの苦悩―新自由主義改革の本格化
10 改革は子どもたちに何をもたらしたか
11 特別支援教育の理念と現実
終章 学校再生の分かれ道

21世紀もぼちぼち四半世紀が過ぎ、現在の目から改めて20世紀や戦後の流れを眺めてみると、今まで見えていた像・暗黙の内に教え込まれてきた像とはずいぶん違ってみえる気がする。やはり、21世紀冒頭までは「戦後民主化の進展」という枠組みが圧倒的に支配していたのだなと思う。もうその図式を中心に語れるような状況ではない。

正確には「戦後学校教育史」となろうか。調べたわけではないが、苅谷剛彦さんの仕事がやや近いかなと思い浮かぶくらいで、類書がありそうでない仕事のように思う。筆者は、子どもの人権保障、産業界の意向の影響、「障害児」の問題を焦点にして、この戦後学校教育史を描き出したといい、その意味では筆者個人の観点や関心が色濃く反映した歴史記述ではある。日本の教育を語る上で必読書とすべきと思うが、同時に、また違った観点からの(そしてこのように手軽に読める)戦後学校教育史がいくつも提示されて、比較検討できるような状況になるといいのだけれど。

[J0375/230623]