岩波現代文庫、2003年、原著は初版が1992年。

第1章 ナザレのイエスの生と死
 第1節 イエスの運動を囲んだ世界
 第2節 イエス
第2章 「ユダヤ教イエス派」の活動
 第1節 ユダヤ教イエス派をとりまく世界
 第2節 ユダヤ教イエス派
第3章 パウロの伝道活動とパレスチナ・ユダヤ教の滅び
 第1節 イエス派の活動をめぐる世界
 第2節 ユダヤ教イエス派の展開
第4章 「キリスト教」の成立
 第1節 「キリスト教」成立の舞台
 第2節 「キリスト教」成立への苦闘」
第5章 キリスト教の伝播・迫害・内部抗争
 第1節 初期キリスト教周辺の世界
 第2節 内外の戦いをかかえるキリスト教

姉妹編(というか元は一冊)の山我哲雄『聖書時代史 旧約篇』(岩波現代文庫、2003年)と続けて眺めたからもあるけど、おもしろかった。数多存在するイエス伝とは異なって、イエスが、宗教史のなかの一登場人物として描かれているところ。

自らによる洗礼の意義を強調して、反神殿的思想を掲げたヨハネに刺激を受けて活動をはじめたナザレのイエス。イエス刑死をさまざまに解釈する後世の諸サークル。その中から、イエスの復活を、自分たちがイエスが裏切ったことへの赦しと解釈してエルサレムに集結した「エルサレム原始教会」の人々。そのうちに進む、「宣教する者が宣教される者と化してしまった」という事態。ローマ帝国下の迫害の中、滅びていった諸派の中で生き延びたファリサイ派。自らはユダヤ教に忠実と考えながら、ユダヤ教イエス派を伝えて、キリスト教の独立を促すことになったパウロ。他方では、再度破壊されつつ再再興するユダヤ教。迫害下に広がっていったキリスト教内部の戦いとして、「正統派」と反階層組織的なグノーシス派の対立。

[J0408/231003]