岡野八代『フェミニズムの政治学』(みすず書房、2012年)。

すごいなあ、これだけ明快な展望の下に、一連の思想を整理していて。このジャンル、知られなさすぎでしょう、って、自分が知らずにいただけの話なのだけども。

ケア関係が公的秩序から排除されてきたという「ケアの倫理」論の問題提起はだいたい共通しているが、ではそうした秩序をどのように組み替えていくかというところで、立場が分かれていく模様。岡野の場合は、普遍性一般性を備えた原理に対して個別性に立脚したケアの倫理が入る場所をつくるというのではなく、ケア関係のなかに普遍的一般的な契機を認めていくという立場。そしてそうしたケアの倫理は、必然的に暴力との対峙となるとともに、人に区分をもたらす国家の枠組みを超えていくものである。ただし、そうした暴力の対峙は、まったく非暴力としてのケアなるものの帰結ではなく、それ自体、暴力や強制に落ち込む危険性をつねにはらんだ実践としてのケアの中に含まれる契機である。さしあたり言葉の精密さを気にせず、ざくっとノートを書いてみたら、こんな風かな。

先に、岡野さんも参加している『ケアの倫理からはじめる正義論』(→[J0012/170522])の中の記述に疑問を呈しておいたけど、この本がその回答に、というか反論になっているんじゃないでしょうかね。

[J0013/170706]