本書出版時、78歳ほどになる著者は、高田瞽女の世界を追って1977年~1983年に「高田瞽女三部作」を出版した著述家。半世紀を経て、当時を振りかえりながら記された1冊。その時間の分の距離感と、逆に体験や記憶が融合した感覚と、奇妙な耽溺を感じる文体。当時、「高田瞽女の世界を壊したのはあなただ」という声も投げつけられたそうだが、距離の取り方が不安定で、だがしかし、このように文章として記録は残った。平凡社新書、2023年。
序 高田瞽女とは
第一部 春を旅する
第一章 春を旅する
第二章 夏の旅
第三章 秋の旅から冬の旅へ
第四章 それぞれの旅路
第二部 取り憑かれてしまったわたしの体験記
本書から歴史的なことを拾えば、瞽女の伝統的な生活が衰退してしまったのは、農地改革によって、彼女たちに「瞽女宿」を提供していた各地の大地主が没落してしまったからであるらしい。その衰退の様子を、瞽女目線でリアルに描いている。ある瞽女の言葉によれば、こうした農地改革もまた「戦争の哀しさ」であり、落ちぶれた人もまた「戦争の犠牲者」なのだという。
なお、大山眞人さんの「高田瞽女三部作」は、国立国会図書館デジタルコレクションの送信サービスにて読むことができる。
>『わたしは瞽女:杉本キクエ口伝』(音楽之友社、1977年)
>『ある瞽女宿の没落』(音楽之友社、1981年)
>『高田瞽女最後』(音楽之友社、1983年)
[J0460/240420]
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