なるほど、禅と念仏の比較という視角を通して、ユニークで退屈させない日本仏教の入門書。日本仏教の多様性に見通しをつけてもらえるような気がする。著者自身の、仏教者としての実践的観点と、仏教史の歴史的知識と、ほどよいバランス。角川新書、2024年。
第1章 本家vs.分家―禅と念仏の源
第2章 保守vs.革新―歴史的な変遷
第3章 出家vs.在家―実践の難易度
第4章 悟りvs.救い―宗教的ゴール
第5章 内向vs.外向―対峙する対象
第6章 引算vs.足算―文化への影響
第7章 個人vs.集団―政治への影響
第8章 坐禅vs.念仏―心理学的考察
改めて指摘されて、そういえばなあと、考えさせられる箇所は多い。
たとえば、悟りをめざす禅仏教には肯定的な人間観が、救いを求める念仏仏教には否定的な人間観が確認されるという指摘。あるいは、鎌倉時代に禅が政権と結ぶことができたのは、幕府の本拠地が旧来の仏教の支配する京都にではなく、新開地たる鎌倉にあったからという指摘。
あとは、法然の信仰の革新性、歴史的重要性。
[J0459/240418]
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