ちくまプリマー新書、2024年。副題「複雑さを生きる技法」。

第1章 世界は意味に満ちあふれている―やっかいな問題としての社会
第2章 社会学って何だ?―みんなで規範の物語を作るいとなみ
第3章 聞くことこそが社会学さ―対話的な社会認識としての調査
第4章 社会学は泥臭い分析技法を手放さない―圧縮して考える
第5章 なんのための理論?―表現の技法としての理論と物語
第6章 みんなソシオロジストになればいいのに―人びとの共同のいとなみとしての社会学

「合意形成の技法としての社会学」という対話的な社会学像を提示、そのポイントは、多元的である「人びとが大事だと考えること」について認識を深めていくということ。この点、岸政彦さんの「他者の合理性」論と近い見方といってよさそうだ。

著者は、自分が取り組んでいる「社会学」に社会的意義があることを実感として感じていて、それをなんとか表現しようとして本書のような表現にたどりついたのだろうと思う。ただこれは誰でもそう指摘すると思うが(また、ご本人も認識していると思うが)、こういう種類の社会学だけが社会学ではなく、数多くある社会学理解のひとつにすぎないことも事実。多様な自己理解を許すこういう学問のありかた自体が、もっと「かっちり」した諸分野や、一般の方からすると、共感しにくいのだろうなとも思う。

ささいな「なるほど」ポイント。社会学における多様な研究方法のひとつとしてのアンケート調査について。「とくに、社会的に安定したカテゴリーについて扱う場合に、アンケート調査は有効に働きます」(101)。こう説明すればいいのか。なるほど。

[J0480/240710]