ちくま文庫、1987年。原著は1982年。

第1章 『ガロ』創刊のころ
第2章 大陸での夢と現実
第3章 特価本と赤本の世界
第4章 三洋社の時代
第5章 『ガロ』売れだす
第6章 個性豊かな新人たち

人並みにガロの漫画のあれこれは好きで、長井さんの名前は知っていたが、読んでみるとなんとはなくのイメージとはだいぶちがっていた。山師風でもあり、淡々としてもおり、審美的な話はほとんど出てこなくて、でもあの漫画群を世に出したのだから、美的な信念はあったはずと思うが、語られていなくて不思議。この本には裏のことまでは書いていないのであれば、逆に納得がいくというぐあいで(でもそうでもないのかもしれない)、あとがきの南伸坊さんによる「大陸的な人」という評が一番しっくりくる気がする。

そもそも、彼が評価し世に出したの作家は、白土三平、水木しげる、つげ義春なんかもそうだし、林静一に杉浦日向子に渡辺和博にねこぢる等々々と、まったく異なる時代や作風のものが続くわけだから、当たり前の読者やクリエイターの感性ではありえないはずだ。

[J0482/240712]