角川ソフィア文庫、2018年、原著は2014年。著者は環境ジャーナリストという肩書きを持っているよう。

第一部 20万年の地球環境史と感染症
第二部 人類と共存するウイルスと最近
第三部 日本列島史と感染症の現状

――エボラウイルスはきわめて変異を起こしやすく、変異の速度は鳥インフルエンザウイルスの100倍もはやいという。(p. 32)

――「これまでウイルスは、病気をもたらす厄介者としか考えられなかった。しかし、RNAウイルスの一種のレトロウイルスは、自分の遺伝子を別の生物の遺伝子に組み込むことによって、生物の進化の原動力にもなってきた。通常、遺伝子は親から子へ「垂直に」移動するが、ウイルスは生物の個体間を「水平に」遺伝子を移動させることができる」(p. 52)

――「世界保健機構も2014年、抗生物質の乱用で耐性菌が急増している現状を警告した」(p. 63)

――「輝かしい古代エジプト文明は、猫から感染したトキソプラズマによって「活性化」した人びとが原動力になった、と唱える研究者もいる。たとえば、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のケビン・ラファテ教授は、トキソプラズマ感染は、以前に考えられていたよりはるかに強い影響を人格や性格の形成におよぼし、探究心や知的好奇心を刺激して人をより人らしく進化させた、と主張する」(pp. 152-153)

――がんの原因となるセックス;とくに子宮頸がん(p. 160)

――50歳以下の口腔がんは、喫煙よりもオーラルセックスの方がリスクの方が大きいという説。予防としてのHPVワクチン(p. 166)

――「中立国のスペインでは、5~6月に約800万人が感染し、国王をはじめ閣僚も倒れて政府だけでなく国の機能もマヒした。大戦中は多くの国が情報を統制していたが、中立国だったスペインだけは統制がなく流行が大きく報じられた。このために「スペインかぜ」とよばれることになった。スペイン政府はこの名称に抗議したが、あとの祭りだった」(p. 214)

――エイズにかからない人の割合は民族による差が大きい。これまでの調査で、世界人口の300人に1人の割合でHIVに耐性を持っていることがわかってきた。(p. 250)

――天然痘ワクチンによってHIV-1型の発症がかなり抑制されていたという説。1980年の天然痘撲滅宣言・ワクチン廃止とともに、エイズが解き放たれたという見方。(pp.252-253)

――世界的にも日本でも、辺境に集中する「T細胞白血病ウイルス」陽性者。西端の九州・沖縄・四国南部・東北・北海道に多く、列島中央部は極めて少ない。縄文人との関係性か。(pp. 310-312)

――結核が増える一因としてのエイズ感染者。世界の結核死亡者のうち、4人に1人はエイズとの再発。(p.332)

[J0028/200422]