中公新書、2019年。ひとつ注意しなくてはならないのは、イギリス宗教改革史が専門の著者だけあって、キリスト教世界一般というより「イギリスにおけるキリスト教と死の歴史」の本だということ。こう前置きした上で、これはありそうにみえてなかなかない良書だ。

第1章 キリスト教の来世観
第2章 幽霊の居場所
第3章 死をもたらすもの
第4章 死と葬儀
第5章 墓と社会
第6章 モニュメント

まず、各章のタイトルから分かるように、死の問題をバランス良く多面的に捉えている。来世観に関わる「教義」をずらっと並べただけの類書も多いが、人々が生きた現実に対する社会史的な記述も厚い。

先行諸研究への言及もていねい。新書らしくわかりやすい概論だけども、ひとりよがりだったり二番煎じだったりも多い死や死生観の領域で、この本は出色の労作だとおもう。タイトル通り「キリスト教と死」に興味のある人だけではなく、イギリス史に興味のある人にも勧めたい。

[J0053/200614]