新函館ライブラリ、2018年。明治の洋物店・呉服店をルーツに1937年に開店、2019年1月に閉店した函館の地方百貨店、棒二森屋の歴史を、その社員でもあった著者が描く。豊富な写真や資料が楽しい。

第一章 初代渡辺熊四郎一代記
第二章 棒二荻野呉服店の歴史
第三章 棒二森屋になってからの歩み

札幌から函館を訪れると少し暖かくて、札幌がまだ雪に埋もれているときに、函館では雪解けがはじまっていたりする。同じように坂の街であっても、小樽では建物が身を寄せ合っている感じ、函館では陽光を浴びるようと街が斜面に立っているような感じがする。歴史を知れば、それが相次ぐ大火の結果とわかるのだが。そんな函館の街の、まさに一部であった棒二森屋。

ローカルな、ちょっとした伝説みたいなエピソードがおもしろい。寺内タケシが来たときには、リハーサル後に急遽電圧を上げる工事をしたとか、坂本スミ子が「なぜか」たった一人でやってきたとか、デビュー直後の松山千春が来た早々に「歯が痛い」と歯医者に行ったとか。

この本とは別の話だが、ちょっと棒二森屋を調べてみたら、ジャックスの出発は1954年、棒二森屋と丸井今井の月賦販売提携からだとのこと。ジャックスが函館市に寄付した旧本社社屋が、いまの函館市文学館らしい。

→ 函館市史デジタル編「カードとサインでお買い物――消費社会が生んだ有力企業」http://archives.c.fun.ac.jp/hakodateshishi/tsuusetsu_04/shishi_07-03/shishi_07-03-54.htm

[J0102/201114]