中公新書、2020年。

序章 畏怖の始まり
第1章 震撼する貴族たち―古代
第2章 いかに退治するか―中世
第3章 祟らない幽霊―中世
第4章 娯楽の対象へ―近世
第5章 西洋との出会い―近代
終章 モノノケ像の転換―現代

もののけの通史として、全体としては必ずしも新しい知見ばかりではないけれど、説話や関連語の用例をガシガシ掘り起こしていて楽しい。

幽霊の語史についての指摘は重要で、「幽霊」は必ずしも死霊を指していたわけではなかったと、先行研究の前提を批判している。たしかに古代や中世の文芸作品に幽霊の用例は少なくとも、願文や古記録にはかなり多く見られる語であるとは、著者が発見したところのもののようだ。著者は幽霊の語が有していた多義性を証するものとして、死後の法然を幽霊と呼んでいる願文中の用例を示している。

[J0126/210119]