講談社現代新書、2007年。

第1章 ヴィクトル・ユゴーを読みながら
第2章 制度と信仰
第3章 「共和政」を体現した男
第4章 カトリック教会は共和国の敵か

フランスのライシテ原理の歴史を紹介。あとがきに、谷川稔『十字架と三色旗』くらいで、「歴史学の知見をふまえた平明なライシテの解説書はほとんど見当たらない」と執筆の動機が書かれているが、難しすぎず丸めすぎず、その目的がよく達成されていてありがたい一冊。最近では伊達聖伸さんなどがライシテに関する概説書を出版されて選択肢が増えてきているが、ユゴーの小説の読み解きにせよ、ジュール・フェリーとその背景の紹介にせよ、親切な本書の記述の価値はなお高い。

既存の概説書を参照しながら書かれているが、先行研究の扱い方にもフェアさを感じる。・・・・・・と、なんだか新鮮な感想を書いてきたが、半分以上読んでから以前に読んだ本であることに気づき、また自分自身に「いやいや・・・・・・」となるのだった。このブログ名「本の虫」は、食べたら消化排泄して残らないという意味でもある。

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