講談社現代新書、2021年。

第一章 今も残る土葬の村
第二章 野焼き火葬の村の証言
第三章 風葬 聖なる放置屍体
第四章 土葬、野辺送りの怪談・奇譚

新書っぽくないテーマのルポルタージュ、実は現代にもまだ土葬や土葬をめぐる民俗があるという事実、そして民俗学者でもなさそうなのに、それを何十年も追う著者の情熱と、驚くポイントも多い本。残っていた土葬の風習もここ数年で急激に減ったというが、それでも簡単に「もういわゆる古い民俗など残ってない」などと諦めるべきでもないのだな。実際の葬列の写真などもいくつも所収。

場所は、奈良盆地の東側の山間部と、隣接する京都府の南山城村とのこと。廃仏毀釈で有名な、あの十津川村の神式埋葬の報告もある。三重県伊賀市島ヶ原の「お棺割り」すなわち四十九日に墓をあばく風習だったり、死亡した妊婦の胎児分離の風が死体損壊罪に問われた例だったり、なかなかえげつない記述もあり。

本書にも触れているが、東日本大震災で火葬が追いつかず、一度は土葬をしたもののの、故人に申し訳ないという感覚から再度土葬をしたというのは、よく知られているエピソードである。それが、土葬が当たり前の大安村では「焼かれるのはかなわん」と(56-57)、風葬が当たり前の与論島では「土に埋めるのは、犬や猫じゃあるまいし」という言葉を聞いたとか(198)、なるほど。

[J0143/210309]