新潮文庫、2020年、原著は2016年。

第1章 列島の労働者たちよ、目覚めよ
第2章 経済にデモクラシーを
第3章 保育園から反緊縮運動をはじめよう
第4章 大空に浮かぶクラウド、地にしなるグラスルーツ
第5章 貧困の時代とバケツの蓋
エピローグ カトウさんの話

ブレイディさんの本は何冊目か。キャバクラや保育園、ホームレスといった問題を扱って、雰囲気だけでものを言うのではなく現地取材もしている、しっかりした日本社会のルポルタージュだったのに良い意味でびっくり。イギリス在住歴が長い著者、たんにいわゆる出羽守にならないのは、その経験がイギリスでも労働者階級のそれだから。

ひとつのポイントは、日本の左翼や社会運動が理念に走りすぎて、貧困を経済問題として捉えてきていないという認識。一億層中流が貧困その他の問題を「見えない」ようにしているだとか、日本社会の人権意識が義務前提の考え方でしかないとか、この辺は本当に「あるある」だ。

広い層に、学生にもぜひぜひとお勧めしたい一冊。最後のカトウさんの話だけもうひとつピンと来なかったが、まあそれはよし。

[J0145/210325]