山川出版社、2005年。

1.イタリア対アルゼンチン
2.言説としての南イタリア
3.イタリアの北と南
4.アルゼンチンのイタリア移民
5.再び、イタリア対アルゼンチン

おもしろい。1990年イタリアで開催されたサッカーW杯のイタリア対アルゼンチンの対決、つまりシチリア出身のスキラッチと、セリエAナポリに所属していたマラドーナの激突でもあった試合を話の端緒にして、イタリア史における南北問題――アルゼンチンへの移民史も含めて――を辿る。

イタリアの「南部問題」は、国家としての統一のあり方がほかの国とは異なるイタリア特殊の事情であるとともに、歴史上よくある地域への「レッテル貼り」の一事例でもある。しかしここでも怪物チェーザレ・ロンブローゾが何度も出てきて、アルゼンチンのイタリア移民差別にまで影響を与えていることを知る。もちろん彼自身、イタリアの人だったわけだが。ユダヤ系だったのだろうか?ちょっと分からないが。

つい最近、亡くなってしまったマラドーナ。「いささか知的能力を欠いた人物というイメージが広まっているかもしれない。しかし、彼の言説を彼がそのときどきにおかれた状況に照らして再読するならば、それがきわめて論理的であり、核心をついたものであることに驚かされるであろう」(180頁)。「マラドーナはきわめて理知的であり、自分の周囲の状況がよく見えている」(181頁)。かつ、彼はトリックスター的な役回りを引き受けていたという。「彼がプレーをするだけで、彼の意志とはまったく別に、社会の矛盾や問題点があらわになってしまうのである」(181頁)。その謎ときは、本書本文で。

[J0146/210412]