NHK出版新書、2014年。

第1章 開発者たちの描いた夢
第2章 プロ棋士挑戦への道―電王戦前夜
第3章 老棋士の奇策―第一回電王戦
第4章 プロ棋士が敗れた日―第二回電王戦
第5章 リターンマッチ―第三回電王戦(1)
第6章 決着―第三回電王戦(2)

こちらは藤井聡太現2冠の活躍でまた将棋を観るようになったクチだが、将棋におけるAIと人間との関係はおもしろい。このルポは、人間には敵わなかったところから、いよいよトップ棋士をも凌駕する2014年の第三回電脳戦までの状況を描く。棋士たちの才能や個性はそれなりに広く知られているところだが、将棋ソフトの開発に心血を注いできた天才たち、山本一成や保木邦仁らの情熱も魅力的。なるほど、保木がBonanzaを開発して、そのソースコードの公開に踏み切ったことが重要だったのか。全体の発展のために隠しだてしない感じは、羽生さんと一緒かもしれない。この本の記述は、たんにAI側だったり棋士側だったりにだけ肩入れしていないところもいい感じ。

棋士とAIとの関係では、糸谷哲郎現八段のインタビュー記事がおもしろくて、今は「努力型のほうがソフトを使った勉強に適正がある」とのことで、ひらめき型は受難だと。つまり、努力部分はコンピューターに委ねて、省力化をはかれるようになる、というようなイメージとも違うという。AIの発展が進むと、さらに状況が変わることもあるんだろうか。競争原理が働く以上、やっぱり努力の部分は省けないのだろうか。おもしろいな。

ライブドアニュース/王将リーグ『才能と努力』糸谷哲郎八段インタビュー(2019年9月)https://news.livedoor.com/article/detail/17107444/

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