中公新書、2021年。

序章 家計とジェンダーから見た金融史
第1章 「素人高利貸」の時代―戦前期
第2章 質屋・月賦から団地金融へ―1950~60年代
第3章 サラリーマン金融と「前向き」の資金需要―高度経済成長期
第4章 低成長期と「後ろ向き」の資金需要―1970~80年代
第5章 サラ金で借りる人・働く人―サラ金パニックから冬の時代へ
第6章 長期不況下での成長と挫折―バブル期~2010年代
終章 「日本」が生んだサラ金

うわ!これはおもしろい!凄い仕事だ。著者は農経(農業経済学)の人らしく、サラ金なんて経済学ではぜったい周辺のテーマなんだろうけど、「サラ金の金融技術の革新」を描くところは、ふつうの社会史を超えて、経済学になじんだ人ならではのおもしろさ。一方では、ジェンダーの時代的変容といった側面にも目配せがされている。やっぱりハイライトは、この研究に手を染めたきっかけでもあるという、「成長著しい業界に独特なエネルギーを持つ人々の魅力」が描かれた前半部。昭和~平成期日本社会史の必読書のひとつだと思う。

ディティールにおもしろポイントは数多くて挙げきれないが、そのひとつ、各社割拠のサラ金業者11者が結集して1969年につくった、不良債権者のブラックリストを管理する日本消費者金融協会。この組織によって不良顧客のチェックが可能になり、審査基準を緩和するなど業界の発展が促進された。一度は分裂の危機があったそうだが、外資系消費者金融の登場に際して再度結集、実際にこの組織を元に外資系の駆逐に成功する。こうしたシステムは実際、現代における顧客データ管理システムのはしりといえそうだ。

「闇」の側面から、セーフティネットとしての側面まで、いずれにしてもサラ金が民衆の生活の現実に密着した存在として、時代的変遷を経てきたことがよく描かれている。昭和~平成期日本社会史の必読書のひとつだと思う(二度目)。

[J0167/210614]