吉川弘文館、2021年。

霊場寺院の中世―プロローグ
霊場を知る
霊場を定める
霊場に参り納める
霊場復興
今を生きる寺―エピローグ

なるほど。ある研究課題を追究した研究書というよりは、山寺に関する歴史的研究の情報を広く集めて紹介した本といった風(歴史文化ライブラリーだし)。東北を代表する霊場のひとつ、立石寺の歴史の深さをうかがうことはできる。まず入定窟の調査についてはかなり紙幅を割いていて、そのほか目に付いたトピックを挙げると、円仁を助けたという狩人、磐司磐三郎の伝承であったり、比叡山との不滅の法灯のやりとりであったり、一相坊円海と鳥居忠政との確執であったり。近世で話が終わっていることもあって、民俗寄りの記述はあまりなく、ムカサリ絵馬の話なども言及されていない。

山寺については、出羽三山などとは異なり、奥まった山の中にあるというよりも、開けた小盆地を前に切り立った場所にあることが印象深い。聖地として栄えた結果として因果が逆という面があるにしても、パノラマ的な配置になっていて、同じ霊場では長谷寺など連想させる。

[J0183/210804]