二瓶社、1990年.

1.ウダツのある風景
2.ウダツとは何か
3.都市の誕生
4.絵巻物の世界
5.洛中洛外図屏風の世界
6.名所図会の世界
7.ウダツの終焉
8.現存するウダツ

「うだつが上がらない」という言葉に名残を今に残す、ウダツ。非アカデミックな研究者によくありがちな冗長さが、むしろ本書の場合は迫力にもなっている。全国各地に残るウダツを紹介、といった本かと思いきや、全体の三分の二くらいの分量は、絵巻物などの歴史資料の中に描かれているウダツを追跡。凄いのは、「まだウダツが描かれてない」という、不在までを辿っているところ。

ウダツは防火機能でよく語られているが、それは機能の一部で、装飾的な意味も大きい模様。むしろ、防火機能は低かったとか。基本的に、江戸時代後半には町衆の文化だったウダツは終焉を迎えたという理解。1680年頃から1780年頃の100年間に、京都・大坂・江戸の三都には大火が相次ぎ、ウダツも焼亡。自主の精神を持っていた町衆は「町人」となり、倹約令などの下にウダツ文化もなくなったというのが本書の説明。美意識においても、枯淡を好むような変化のなかで、異形のウダツは時代に合わなかったと。しかしもちろん、1990年当時のこととして、江戸末期や明治に作られ現存するウダツも紹介されている。

[J0187/210816]