三五館シンシャ、2021年。交通誘導員、派遣添乗員、メーター検診員等々の、ふだんは目立たない職業人に焦点を当てたシリーズ中の一冊。

第1章 汗と、涙と、罵声の日々
第2章 ドライバーの事情、お客の事情
第3章 警察なんて大嫌い
第4章 さよならタクシードライバー

副題は「朝7時から都内を周回中、営収5万円まで帰庫できません」とある。この副題からして、よくある誇張に満ちた「残酷物語」かと思いきや、さにあらず。むしろ、どちらかといえば淡々と、もう少し正確にいえば実直にタクシー運転手を務めた著者の日常的エピソードの数々が綴られていて、好感。『孤独のグルメ』でいうところの「こういうのでいいんだよ」というやつ(かな?)。へええ、個人タクシーって、運転手界のエリートなのか。

>描かれている世界はまったくちがうが、大正時代のタクシードライバーの伝記としては、高橋佐太郎『草分け運転手』(1958年)がある。

[J0310/221114]