副題「終末思想で読み解くキリスト教」、中公新書、2022年。

第1章 あの世の地勢図
第2章 裁きと正義
第3章 罪と罰
第4章 復活

著者の博学がうかがいしれる一冊で、たしかにこういう本が存在することに世間的な意味はあるだろう。ただ個人的に評価をするなら、どこまでが著者独自の知見かも分からず、自身の主張もあいまいなまま、うんちくをずらっと並べたこの種の本に対する評価は、辛めになる。

致命的な欠点は、さまざまな絵画や彫刻を、著者のうんちくに対する一種の「挿絵」としか扱っていないこと。もし絵画や彫刻を中心に扱うのであれば、あれこれの宗教思想がなぜ絵画や彫刻といった特定の形態をとって表現されることになったのかという問題に対する考察がともなっていなければならない。たとえば、イスラーム圏で具体的な図像化が避けられることも、宗教思想の表現であるはずである。プロテスタントをはじめ、キリスト教にも同様の重要な問題圏がある。

同じ中公新書の類書なら、指昭博『キリスト教と死』の方が圧倒的に価値が高い。

[J0309/221114]