講談社、2022年。

1 夕日
2 庭先
3 井戸
4 桟橋
5 校舎
6 灯台

この著者による『ドライブイン探訪』が同人誌のときから好きで、その後も著作をちょこちょこと読んでいるわけだが、本書はなんと、沖縄本部町から船で15分のところにある小島、水納島の滞在記。なんと、というのは、極個人的な理由であって、僕も何の目的もなく、ふらっと滞在したことがあり、そのことが思い出になっている島だからだ。海水浴の時期は人で賑わう場所らしいが、僕が訪れたのは2月で、「何もないのに」と水納島に来たこと自体を笑われたもんね(地元民にではなく仕事で来てた人に)。橋本さんとは感覚が近いのかな。

聞き取り調査のようで、エッセイのようで。それでいて、あれこれ資料にも当たっていて、巻末には解説付きのリストもついている。学術的な参考文献だけではないので、ほう、椎名誠も水納島に来たことがあるんだな、とか、眺めていても楽しい。

学術的な調査ではないからこそ拾える、地元の人がなにげなく語る、断片的な過去の思い出話の数々。橋本さん独特のアプローチには、「なんかいい」を生みだす理由がある。「なんかいい」を形にとどめて残せるのはすごいことだ。

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>橋本倫史『市場界隈』

[J0350/230331]