『フランス社会主義』(1981年)の改題・改訂版として、平凡社ライブラリーから2023年に復刊。「隠れた名著」復刊という謳い文句も納得。僕にとっては一読すればただちにすべてを理解できるという種類の本ではないが、プルードンの思想の全体像を描いて充実した記述。自分でルソーやマルクス、コントやデュルケームあたりと比較検討しながら読むと、理解が深まりそう。

序章 フランス社会主義の歴史構造
1 経済学と社会主義
2 協同組織思想の展開
3 プルードンのアソシアシオン論
4 プルードンの社会革命論
5 プルードンと“国家の死滅”

今回の拾い読みで自分なりに拾ったところ。

プルードンは、所有を「盗みである」とし、それが「専制的支配」であることを主張するとともに、資本・国家・教会が〈絶対主義の三位一体〉として、搾取と抑圧の体系を形成していたと捉えた。その上で、社会における「秩序とアナルシーの結合」によってその克服を構想した。これは、現在流行(?)の反国家思想、アナーキズム論のはしりでもある。

その際、プルードンはばらばらで一般的な個人を基礎に考えたのではなく、手に職を持つ労働者こそが自由と自律の基礎として、自らのアソシアシオン(協同組織)論を展開した。また、従来のアソシアシオン論がしばしば宗教的なものへの傾斜を含んでいたことに対する批判も、彼のアソシアシオン論には含まれている。さらに、革命自体が宗派主義的で排他的になりがちであること明確に見抜き、これを避けようとしていたのはたいへんな先見の明といえる。なお、マルクスとは一時期文通もしていたが、じきに途絶えたとのこと。

そう、気になったのはプルードンによるルソー批判で、中間集団の多元性を社会の基礎におくプルードンは、一元的なルソーの一般意志論を拒絶していたとか。こうしてみると、サン=シモンやデュルケームのように、分業の進展を強調しながら、その先に共通の集合意識を想定する発想は、ルソーとプルードンのあいだに位置するとも言えそうだ。

国家と資本の本源的結合という論点については、萱野稔人『カネと暴力の系譜学』も連想した。

[J0447/240104]