光文社、2024年。話題書をのぞいてみる。この本だけの話じゃないんだけど、この種のテキストって、実際に順番に読んでこなして、論文の技能を身につける人っているのかな。あまり想像ができない。そういう授業を受けたことはないけど、本の順番に授業をするっていうなら、まあ、ありえるのかな。初学者にポンと渡すのには躊躇する。むしろ、一定の経験のある人が「あるある」本として読むものという気がするが、どうか。

原理編 アーギュメントをつくる;アカデミックな価値をつくる;パラグラフをつくる
実践編 パラグラフを解析する;長いパラグラフをつくる;先行研究を引用する;イントロダクションにすべてを書く;結論する
発展編 研究と世界をつなぐ;研究と人生をつなぐ
演習編

本書の立場のひとつの特徴、必要なのは「アーギュメント」であって、「論文に問いは必要ない」と主張する。「問いは、あってもかまわないし、ある場合が多いし、効果的に用いることも可能だが、問いの有無は論文の成否における条件とは本質的に関係がない」(3)。「論文とは何か?」は「問い」で、「論文とはアーギュメントを論証する文章だ」という主張内容が「アーギュメント」らしい。あんまり説明がないのでこれ以上はよく分からないのだが、執筆者の内面から湧き立つ何か、みたいな「問い」の要求を論文の要件として相対化しておきたい、ということだとこっちで勝手に解釈するなら、まあ、分かる。要は「問い」という言葉を持ちこむ必要はないということかな。

有益な「演習」として参考になりそうなところ。
先行研究の「アーギュメント」ないし「アーギュメントにもっとも接近している箇所」を、それだけをあらわす蛍光ペンでハイライトする演習。さらに、そのアーギュメントを自分の言葉でパラフレーズする演習。

その要領で、本や論文の全体のアーギュメントを特定・抽出するとともに、各章のアーギュメントについてもハイライトする演習。

また、アーギュメント以外にも引用可能性があるところを特定し、ハイライトするやりかた(98-99)。本書著者の場合として、①赤:ぜひとも引用したい。②青:引用する可能性がある。③緑:重要なデータ、ファクト、情報。この本からではなく、自分で一次資料にあたって引用。④下線:読んでいて軽く重要だと思った箇所。

人文学の目的について。「人文学というものの究極目的のひとつが社会変革」。「人文学の究極目的のひとつは、暴力の否定である」(138)。「世界をより良くするという究極目的」(138)。「文学部不要論や、「人文学ってなんの役に立つの?」といった問いにたいして、さまざまな回答を目にする。わたしの回答はシンプルだ。それは世界から暴力を減らしているのである」(139)。「暴力を減らすための言論活動の価値が世界から消えることはない」(139)。「研究が世の中の利益になる方法は、すくなくともふたつある。第一に、世の中を良くすること。第二に、世の中を悪くなくすることである。暴力批判はこの後者に奉仕している」(139)。

こういうことを意識することが大事なのはまちがいない。「究極目的のひとつ」と言っているのだから、まったくそれはそのとおり。

[J0633/260114]