Month: February 2026

大石始『盆踊りの戦後史』

副題「「ふるさと」の喪失と創造」、筑摩選書、2020年。戦後の「伝統的じゃない」盆踊りの歴史をたどって、これはすばらしい仕事。『ニッポン大音頭時代』という著書もある氏の、大衆音楽史の知識がまた効果的に活かされている。

第1章 日本の近代化と盆踊り―明治~昭和初期
第2章 戦後復興と盆踊りの再生―昭和20~30年代
第3章 高度経済成長期の新たな盆踊り空間―昭和30~40年代
第4章 団塊ジュニア世代と盆踊り―昭和50年代
第5章 バブル最盛期の盆踊りと衰退―昭和60年代~平成初期
第6章 東日本大震災以降の盆踊り文化―平成後期~現在
終章 アフター・コロナ時代の盆踊り―2020年夏に考える

「ダンシング・ヒーロー」や「一休さん」で踊られるようになった最近の動向や、YOSAKOIの影響などは詳しく知りたかったトピックだし、高度成長期には地元企業や共産党などが、地域イベントとしての盆踊りの立ち上げに大いにかかわっていたというような話もおもしろい。

まさに盆踊りの戦後史を扱った本書。近代以前~近代までを中心とした下川耿史『盆踊り:乱交の民俗学』とあわせて読んでも楽しい。

[J0647/260223]

宇野邦一『ハーンと八雲』

ハルキ文庫、2025年。底本は2009年。

序章 ハーンと世界
第一章 アメリカのジャーナリスト
第二章 クレオールの真っ只中へ
第三章 日本の第一印象
第四章 日本という問い
第五章 ヴィクトリア朝の知識人
終章
補論 究極の怪談―十六年後の感想

日本に関する著述に関心が集中しがちなところ、ハーンの文学と思想の全体像を描こうとする。ベンチョン・ユーの『神々の猿』といった例外をのぞくと、そういった試みはほとんどないとのこと。ある程度ハーンを読んで、その宇宙的ヴィジョンの魅力に触れてきた身として正直な感想をいえば、内容面で特別に新しいことはないが、それだけ、これまでのハーン論・八雲論が偏ってきたということではあるだろう。その意味では穏健なところに価値のある一書だと思う。

なので、日本来訪以前のことも重視する。なるほど、シンシナティで書いた記事として紹介されている次の文章など、たしかにいかにもハーン=八雲らしい。

「地球上に死体がまき散らされている。その深層はひとつの広大な納骨堂であり、そこには何世紀にわたって、わずかばかりの期間を生き長らえ、そのふところに倒れ伏した生命のない肉体の塊、どうしようもなく不快な物質の一片となった人類の遺骸が蓄積している」

著者自身の評から、「ハーンの思考には、確かに二つの極があった。事物、生命、日常の細部にかぎりなく知覚をとぎすまし、個々の存在の差異に細やかな注意をむけることがひとつの極である。もうひとつの極は、かぎりなく広大な宇宙的広がりに照らして世界を、生命を、人間を展望するような見方である。しかし、ハーンにとって、二つのことを決して矛盾しなかった。個々のそれぞれの存在は、決して統一もされないし、総合もされずに、ただ異なるものとして対面し、対面しながら、共振し、協和し、共存しうるのだ」(252)

本書でも一部引かれている文章として、メモ。
鶴見俊輔「日本思想の言語:小泉八雲論」(NDL)
[J0646/260222]

L. Radbruch et al.「緩和ケアの再定義」

Radbruch L, De Lima L, Knaul F, Wenk R, Ali Z, Bhatnaghar S, Blanchard C, Bruera E, Buitrago R, Burla C, Callaway M, Munyoro EC, Centeno C, Cleary J, Connor S, Davaasuren O, Downing J, Foley K, Goh C, Gomez-Garcia W, Harding R, Khan QT, Larkin P, Leng M, Luyirika E, Marston J, Moine S, Osman H, Pettus K, Puchalski C, Rajagopal MR, Spence D, Spruijt O, Venkateswaran C, Wee B, Woodruff R, Yong J, Pastrana T.,
“Redefining Palliative Care-A New Consensus-Based Definition.”
J Pain Symptom Manage. 2020 Oct;60(4):754-764.
doi: 10.1016/j.jpainsymman.2020.04.027

The International Association for Hospice and Palliative Care による再定義の提案。450人以上の関係者の意見を数的に処理したという意味での「合意」ベースでの再定義。従来のWHOによる定義の更新を意図する。

議論はあったものの、終末期という言及を加えたとのこと。また「患者・家族・介護者の生活の質の向上を目的とする」と、介護者が対象に入っている。

「緩和ケアは、健康に関わる重篤な苦痛、すなわち重症疾患、特に終末期に近い疾患に由来する苦痛にある、どの年齢層の方々に対しても施行される積極的な全人的ケア(the active holistic care of individuals)である。緩和ケアは、患者・家族・介護者の生活の質の向上を目的とする」。以下、詳細の説明が続く。

その内容は下記リンクの通り。

>Consensus-Based Definition of Palliative Care
>その日本語版

[J0645/260221]