Month: December 2025

秋元松代『氷の階段』

朝日新聞社、1979年。劇作家である著者のエッセイ集。

「伝説と創作」は、土佐の「七人みさき」の風習に出会ったときの話。著者はのち、これを題材にとった戯曲を書いている。

「氷の階段」は立石寺訪問記で、ムカサリ絵馬という名称は用いていないが、婚礼を描いた絵馬のことに触れている。

国立国会図書館デジタルコレクション(個人送信サービス)
> 秋元松代『氷の階段』
> 秋元松代『七人みさき』

[J0627/251219]

齋藤純一・谷澤正嗣『公共哲学入門』

副題「自由と複数性のある社会のために」、NHKブックス、2023年。もともとは講義の教科書とのことだが、いいかんじの概説。前半が学説解説、後半がイシューごとの説明となっていて、とくに後半はごく薄くではあるけど、紹介という目的には即している。「ありがたい、助かる」のカテゴリーに入る一書。

公共哲学は何を問うのか
公共哲学の歴史1
公共哲学の歴史2
功利主義の公共哲学
リベラリズムの公共哲学
リバタリアニズムの公共哲学
ケイパビリティ・アプローチの公共哲学
平等論と公共哲学
社会保障の公共哲学
デモクラシーの公共哲学1
デモクラシーの公共哲学2
フェミニズムの公共哲学
国際社会における公共哲学

新しい動向を手びろく見渡しているのは強み。基本理論については、ロールズやセンの記述にも通りいっぺんの紹介以上のことが含まれているのと、ハーバーマスの説明に一節を充てて比較的手厚い。知らないだけかもしれないけど、これくらいの分量のハーバーマス紹介って、実はあんまりないような気がする。

[J0626/251215]

アマルティア・セン『インドから考える』

副題「子どもたちが微笑む世界へ」、山形浩生訳、NTT出版、2016年、講演やエッセイを集めた本で、原書はThe Country of First Boys, 2015。

序文 (ゴパルクリシュナ・ガーンディー)
編者まえがき
はじめに——個人的なものと社会的なもの
暦から見たインド
遊びこそが肝腎
押しつけられた矮小性
飢餓——古い苦悶と新しい不手際
自由について語る——なぜメディアが経済発展に重要か
日光その他の恐怖——学校教育の重要性
世界を分かち合う——相互依存とグローバルな正義
一位の男の子たちの国
貧困、戦争と平和
本当に憂慮すべきものとは
タゴールのもたらすちがいとは何か?
一日一願を一週間
ナーランダー大学について
解説 湊一樹 (アジア経済研究所)

インドの現実にふれたエッセイが多く、センがどんな社会状況をみすえて彼の理論をつくっているのかが分かる。

 エッセイ集だけにこの本自体はさらっとした文章ばかりだが、より本格的な道徳哲学でも経済学でも、議論のための議論にならないよう、貧困や不平等の現実的解決をつねにめざして話を組みたてるセンの姿勢は読むたびに感動的。
 一方で、セン自身の瑕疵ではないのだが、インドという非西洋のバックボーンをもって、学校教育、女性のエンパワーメント、討議に基づく民主主義、報道の自由、文化の多元主義といった事柄の積極的意義を正面から打ちだすセンの議論は、西欧世界の文化人にとっても受け入れやすく、ある意味で都合が良すぎる面があるのも事実である。宗教の問題についてそうだが、西欧的価値観を奉じる勢力にとって耳が痛いとか、なにかをそこにぶつけるといった面が乏しい。僕自身はセンのやりかたが好きで偉大な人だと思うが、センに満足できない人たちもいるだろうこともなんとなく分かる。戦い方はいろいろだ。

[J0625/251213]