東洋経済新報社、1995年。小熊英二『社会を変えるには』で参照されていたので、読んでみた。『「日本人らしさ」とは何か』というタイトルで文庫化もされている模様、そっちを買えばよかったな。それは失敗。

第1章 日本型ソシオグラマーの原理
第2章 日本人の考え方
第3章 個人のソシオグラマー
第4章 集団の中のソシオグラマー
第5章 さまざまの集団のソシオグラマー
第6章 日本型システム
第7章 その他のソシオグラマー
第8章 結論

「行動文法」はソシオグラマーとカナをふるらしい。「本書では、個人は自分の利益を追求し、不利益を避けるという、それこそ「普遍的」といえる原理から出発しながら、与えられた状況に適応し、お互いに利益になるやり方を練り上げた結果が、「集団主義」、「横並び行動」、「会社主義」をはじめとする一見ユニークな「日本らしさ」を生み出したという見方をとっている。それはあくまでも合理的なもので、日本人にしかわからない純日本的原理や他に類例のない文化、思想から出てきたものではないのである。そこで本書では、個人の行動から、さまざまな集団の特徴、経済や政治のゲームのスタイル、国家のあり方にいたるまで、日本人の「行動文法」がいかに「自分本位」あるいは「自分たち本位」にできあがっており、かつ合理的であるかを説明することに終始している」(ii)。

どこまでそういう説明原理を徹底させているかは微妙だが、ずらっと「日本人らしさ」のテーゼ(?)が並んでいて、たしかに面白いものは面白く、日本人論の命題集といった体。ひとつひとつは日常生活や社会生活でよくみる「日本人あるある」「日本社会あるある」だが、これだけまとまって書くのは凄い。360ページもある。

著者はそこを説明してはいないが、いったいどういう動機からなんだろうか。皮肉なのか、恨み辛みなのか、諦めなのか。真顔でジョークを並べているようにも読める。

[J0079/200822]