べてるの家の本制作委員会編、清水義晴発行、1992年。

第1章 「べてる」を支えるもの
第2章 「べてる」の人たち
第3章 「べてる」の人たちに出会って
第4章 「べてる」に学ぶもの
第5章 弱さをきずなに

いまでは有名な北海道浦河の「べてるの家」、僕も何冊か関係の本は読んだが、この本はべてるがまだ有名になる前、関係する人たちが短文を寄せて編んだ自費出版的な本。

他の本とはまたちがった初期の生々しさがあり、べてるの家や、向谷地さんのキリスト教的な根っこについてもあちこちに言及。日本では、どんな運動もすぐに「脱宗教化」して受容されてしまうから。それから、AAAとの関わりもなんとなく分かってくる。

今回は、宮島利光『チキサニの大地』にこの本に言及している箇所があり、アイヌとの関連が気になってきてヤフオクで購入したのだけども、この点に関しては宮島本に引用してある箇所がすべてだった。

向谷地生良さんの第1章から、「浦河べてるの家の歩みは、悩むことの歴史でもありました。しかも、悩むことの価値を学んだ歴史でもありました。生活することは、悩むことであり、生きるということが「悩む力」を身につけ、自分と人との悩みを引き受けていくことだということを教えられたのでした。悩みを無くする努力は、行き着くところは「自己否定」なのです」(26)。

べてるの家の思想についてはもっとまとまった本がいくつも出ているから、この本はとくに突っ込んでべてるの歴史を知りたいという人向けかな。史料として細かいことを言えば、今回手に取った版は2002年の第十五刷で、年表なども後から更新されているので、もしかすると初版には別の情報も入っていた可能性はなくもない。

[J0190/210823]