Author: Ryosuke

前川仁之『浄土真宗「道場」の四季』

副題「北陸・福井に残る真宗信仰の古層」、宗教問題、2025年。

序章 正月
第1章 春
第2章 夏
第3章 秋
第4章 冬
終章 そしてまた春へ

足で稼いだ体当たりルポルタージュ。自転車で回ったりしていて、地域間の距離感や、真宗道場の分布の密度まで伝わってくるようだ。道場の建物、伝統、そこに現在関わっている人たちのことと、著者が寄せるまなざしのバランスも好きだ。道場にかんする著書は、福井県で2016年に刊行された『越前浄土真宗門徒を支えた道場さんを訪ねて』という本くらいしかないらしい。いまざっとみたかんじでは、たしかに入手困難な模様。勝山市の水上甚栄さんがまとめたという『蓮如上人御旧跡縁起 令和の味わい』という本も気になった。

ガツガツと特殊な慣行を集めるような感じではないが、いろいろと興味を惹かれる話題も。お菓子や食べ物の記憶の話。道場の減少。教義ではありえない、蓮如上人による幽霊済度の伝承。集落間での仏様の絵像の交換。女性が寺を逃げ場にしていた話。戦死者の追悼を行う宿因講。などなど。

とりあげられている道場は、福井市の5ヵ所、勝山市の14ヵ所、永平寺町の4ヵ所、鯖江町の1ヵ所、大野市の8ヵ所、岐阜県郡上市の1ヵ所。これだけ回る、すごい情熱。

[J0616/251130]

後藤遼太・大久保真紀『ルポ 戦争トラウマ』

副題「日本兵たちの心の傷にいま向き合う」、朝日新書、2025年。

序章 少年兵は幽霊になった
第1章 沖縄とベトナムが壊した人生
第2章 トラウマの歴史と社会への影響
第3章 父が家に持ち帰った心の傷
第4章 第3世代が語る「戦争体験」
第5章 世代を超える負の連鎖
第6章 市民が見た沖縄、原爆、大空襲
第7章 日本軍が外国で残した爪痕

これは重要な一冊。戦争のことだけでなく、人生というものを考えさせる。戦争では虫けらのように人を殺すが、殺した側にものこる戦争トラウマは、やはり人間には人間を本当に虫けらのように扱うのは難しいということもわかる。その体験はずっとその人や、さらに子孫をまで縛ってしまう。

『戦争トラウマ記憶のオーラルヒストリー』の著者、中尾知代さん。「日本軍が与えたトラウマを直視しないことは、自分たちの加害によるトラウマを癒やす機会も失うことになる。・・・・・・復員兵や家族を苦しめる戦闘や加害のトラウマは、相手のトラウマをまず癒やすことで解消する面もあるのではないか。謝罪や償いによって自責のトラウマを癒やすことで、双方が安堵できるのではないか」(278-279)。

>この本の紹介記事
「おやじ何人殺しとんねん…」元日本軍兵士のDVに耐え続けた家族が見つけた“陣中日記”の真実 | ニュースな本 | ダイヤモンド・オンライン https://diamond.jp/articles/-/375631

[J0615/251130]

内藤芳文『鉄師田部家の経営覚書』

2025年、田部グループ。

1 田部家とたたら製鉄の歴史
2 鉄山経営の基盤固め
3 幾度の困難を克服
4 海運へ進出
5 明治期の激動を乗り越える
6 たたらから木炭に転換
7 第二次世界大戦前後から平成期の展開
8 新たな時代に向かって
9 地域と歩む
別章 田部家の祭礼と行事

雲南市吉田の製鉄師、田部家。田部家には部署ごとに手代が置かれ、そのうち主要な者が番頭を務めるが、そのトップが支配人。著者は、株式会社田部の専務とともに田部家支配人を務めた方。

田部家の歴史をわかりやすく説明。ベースになっているのは、田部家の古文書調査の成果。そうした研究調査を支援してきたことも、田部家の力ある活動の一部である。とくに後半では、手広く事業を行うとともに、地域振興活動を推進・支援することで、どれほど島根県が田部家のおかげをうけてきたかが分かる。

[J0614/251128]