日本エディタースクール出版部、1999年。

プロローグ 地下鉄が苦手な男の話
メディア――かつて円タクの運転手だった
 1 出郷
 2 都市のメディア
 3 流シ・タクシーへ
都市――円タクが走った「東京」
 1 流シ円タクは走る
 2 演じられる「都市」
 3 加速化・均質化と〈都市〉の身体
身体――流シの身体・流シの〈都市〉
 1 運転手になる
 2 転がす
 3 稼ぐ
言葉――円タクは氾濫する?
 1 「問題」としての円タク
 2 〈調査〉の視線
 3 統制と円タクの終焉
エピローグ そして、タクシーの「都市」

昭和最初の10年間という、期間としてはずいぶん短いあいだに東京を駆けめぐった「円タク」ドライバーたちの「民俗誌」。著者の重信さんは、本書で、民俗学という看板を掲げている。身体性や感覚面をことさらに強調したり「内燃機関」を連発したりするあたりは多少むずがゆいが、学問的にしっかりとした基盤もありつつ、肩のこらない読み物としてもおもしろい一冊。体験談によるところで回顧/懐古の側面がなきにしもあらずとはいえ、タクシードライバーたちの気概を描くことをとおして、まさに「時代」を浮かび上がらせることに成功している。

過去のエントリーから、現在のタクシードライバーについては、内田正治『タクシードライバーぐるぐる日記』(2021年)。あるいは、栗田シメイ『コロナ禍を生き抜くタクシー業界サバイバル』(2021年)。円タクよりも前の大正時代のハイヤー運転手なら、高橋佐太郎『草分け運転手』(1958年)と、タクシードライバー関連書。

[J0313/221129]