Author: Ryosuke

宮下忠吉『石棺仏』

木耳社、1980年。
中世の石造物は地方色に富んでいて、関東の板碑をはじめ、伯耆の赤碕塔、国東半島の国東塔、薩摩塔などがあるが、播磨の石棺仏も魅力たっぷり。石棺仏は古墳の石棺を再利用してつくられた仏像であるが、本書によれば、河内に3、大和に4、南山城に1、近江に2、丹波に1つがある一方、播磨だけで68あるそうである。この分布の偏りがまず不思議。本書は石棺は単なる材料と捉えているが、石棺それ自体が特別な力を持つものとみなされていたという説もある。

1.石棺仏とは
2.石棺仏と板碑
3.石棺について
4.石棺仏史(仏教芸術の立場から)
5.アミダ浄土教石仏の展開
6.石位寺の三尊石仏

著者は兵庫県の高校教員だったようで、本書にはコツコツと集めた記録とともに、石棺仏への思い入れがこめられている。

>国立国会図書館デジタルコレクション(送信サービスで閲覧可)
 https://dl.ndl.go.jp/pid/12709084

関連の個人サイト、充実した内容。
>「石仏紀行」http://www.isinohotoke.net/

[J0623/251209]

茨木のり子『ハングルへの旅』

朝日文庫、新装版、2023年。原書1986年。

扶余の雀
1 はじまりが半分だ
2 日本語とハングルの間
3 台所で匙を受けとった
4 旅の記憶
5 こちら側とむこう側

いろいろあるけど、なんだかんだ、すっかりなじみ深い隣国となった韓国。ほんの50年前はひどく遠い世界で、韓国語を学ぶ人などめずらしかった時代。東京で百人程度という推計もあったらしい。そんな当時、筆者は50歳になってから本格的に韓国語を学んだようだが、すっかり韓国の文化と人びとに恋におちたという感じだ。

韓国文化を愛して、柳宗悦に韓国の民芸を紹介した人物である浅川巧や韓国にあるその墓所の話も印象に残った。

[J0622/251205]

小野泰博『谷口雅春とその時代』

法蔵館文庫、2025年、原著1995年。もともと未完成の遺稿で、谷口が『生長の家』誌を刊行する前半生のところで終わっている。

文庫版まえがき(島薗 進)
第一章 谷口正治
谷神死せず/家系への誇り/谷口正治/殺生/投書少年/文学乞食/耽美への道/カチューシャかわいや/罪な「言葉の芸術」
第二章 世界立替説
紡績工場にて/心霊治療を求めて/世界立替説/霊動にふれる/鎮魂帰神/本田霊学/変態心理的解釈/霊縛と霊眼/綾部の金神さま/キリスト再臨論
第三章 蛇と蛙
紫陽花の君/亀岡にて/美しい人/医書あさり/蛇と蛙/下座の人・西田天香との出会い/武者小路実篤批判/一輪思想をめぐって/大本事件(第一次)
第四章 神を審く
神を審く/幽祖西田天香/「救いは創造主から来るか」/賀川豊彦の宇宙悪/ニーチェとトルストイに学ぶ/人格価値と生命価値/火事と花見/守銭奴/百姓愛道場/創造主はあるか/谷口式自然哲学/真如と無明/菜食主義
第五章 雪溶け
高岡から神戸へ/聖フランシスに倣いて/善中の悪/近江商人西田天香に学ぶ(宣光社的はたらき)/雪溶け/汝が性のつたなきを泣け/信仰革命──心霊主義/浅野和三郎との出会い/心霊研究的時代背景/太霊道など
第六章 生命讃歌
ニューソートとの出会い/ホルムスの思想/無相の神/神想観における観普賢菩薩行法/就職/生命讃歌/天理教祖と大本教祖について/求道者谷口雅春の誕生/世界救済の大導師
第七章 『生長の家』創刊
『生長の家』創刊/精神分析の紹介/生命教としての生長の家/乳母車に雑誌を積んで/生長の家の守護神/如意宝珠/声字即実相/経済倫埋
第八章 甘露の法雨
呪詛の否定/思考万能の思想/神想観の公開/遠隔指導/『甘露の法雨』/『甘露の法雨』と「罪」
解説・あとがき(島薗進)

谷口雅春(1893-1985)の大正から昭和にかけての精神遍歴を描いて、彼が影響を受けた人物・関わりをもった人物の群像は、あたかも当時の宗教界・思想界の一パノラマのような。ウィリアム・ジェイムズやオスカー・ワイルド、トルストイ、ロマン・ローラン、ニーチェ、エマーソン、ニューソートのホルムス。関係のあったのは、大本関係の人物をはじめ、一燈園の西田天香、倉田百三、賀川豊彦、武者小路実篤など。

[J0621/251204]