安彦良和・斉藤光政『原点』(岩波書店、2017年)。ガンダムで有名なアニメーターであり、のちに歴史漫画に転身した安彦良和の自叙伝。1947年遠軽のハッカ農家に生まれて、弘前大学へ進学。そこで学生運動の全共闘派の活動家に。大学本部を占拠して逮捕、「弘前大学を追い出され、アニメという世界にまぎれこんだ」。

虫プロに入社するがすぐ倒産し、『宇宙戦艦ヤマト』(1974~1975年)制作に絵コンテ担当として参加。1979年、キャラクターデザイン・作画監督を担当して『機動戦士ガンダム』を制作、一躍成功者となるが、1989年にアニメーターを辞めてマンガに専念する。

この世代の(広い意味での)クリエーターたちは、学生運動とのそれぞれの距離の中で自己形成をして、そこで社会批判の観点を磨いてきているという印象。一方、当時の実態としての学生運動の空虚さ馬鹿らしさというものもすごくあって、とくに安彦の心象もあいまって、彼が描く弘前大学の学生運動といえば、絶望的なまでの閉塞感。

「人と人との分かりあえなさ」を主題とした『ガンダム』を、1976年生まれの一子どもがどう受容したかというと、テレビアニメはそこそこに、ただガンプラを作って喜んでいたりしてしたわけだ。

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