講談社選書メチエ、1999年。

序章 人の世界の不思議な構図
第1章 ことばの世界と身体
第2章 ひとまずゼロに戻って―発達論的還元
第3章 身体のもつ心的構図
第4章 ことばの世界の手前で
第5章 ことばの世界の成り立ちと「私」の世界
第6章 関係性から生まれ、関係性に囚われた「私」

現象学的な発達心理学といえば分かりやすいだろうか、それほどべったり頼っているわけではないが、メルロ=ポンティ的な観点というか。ポイントは、言語や自己意識を獲得する最初の場面からして、他者との三者関係をとりむすぶ本源的な力に支えられているという認識。

たんに本書の「結論」を知るというだけでなく、著者とともに、人間存在のふしぎを辿る「発達論的還元」の道行きをたどるところに価値がある本。メルロ=ポンティの対人論、市川浩の身体論、廣松渉の共同主観的存在論などと同系列の議論であるが、一番取っつきやすいのは本書ではないか。

[J0034/200503]