中公選書、2012年。

第1章 天皇陵治定への疑問
第2章 巨大天皇陵は地震の巣
第3章 奇々怪々の陵墓参考地
第4章 謎が謎を呼ぶ大和最大の大王墳
第5章 蘇我氏が断行した方墳への大転換
第6章 王者が眠る八角杉の宇宙
第7章 天皇陵から落ちた高松塚古墳

主題は、古代の「天皇陵」。著者は読売新聞の文化部で活躍した記者であったとのこと、ジャーナリスティックな記述の上に、長年携わってきた古代史や考古学への思い入れがほとばしって、学術書とはまた違った読み物としてのおもしろさがある。一方では、埋葬者が誰かなど、わからないことだらけ、はっきりしないことだらけということがよく分かって、古代史の難しさも感じる。

私がはじめて聞いたのは、ウィリアム・ゴーランド(ガウランド)というイギリス人。大阪造幣寮のお雇い外国人だった彼は、16年間の余暇を古墳のフィールドワークを費やしたと。「ドルメン」という言い方を日本に持ちこんだ人のようだから、私が無知なだけできっとこの世界では知られているのだろう。著者は、モースと同等に評価されるべきだと述べている。お、ウィキペディアを覗くと、ストーンヘンジの保存活動や調査にも関わっていたもよう。おもしろそうな人だ。

[J0093/200929]