新潮新書、2006年。Asian Boss, 北朝鮮人は韓国についてどう思っているの? から、北朝鮮つながりで一読。

目次
憧れの軍隊生活
両親の話
新兵訓練始まる
兵士としての第一歩
何もかも盗んで調達した
抜擢、昇級
農場を襲う
親友の死
命がけの高速道路建設
楽しき副業組
砕け散った夢
脱営、そして放浪と強奪の日々
一兵士として再出発
故郷
初恋と爆発
失望
夢の国、中国に行く
脱北のノウハウ

著者が、中国に亡命した元・北朝鮮兵士に行った聞き書き。2003年時点で36歳、16歳から26歳まで軍隊にいたというから、1988年から1998年頃のこと。

先の動画でみた一般生活も悲惨だったが、軍隊となるともうめちゃくちゃで、盗み、暴力、賄賂、飢えに満ちた生活。先の動画では、韓国に亡命した女性が「未来にワープしたよう」という話をしていたが、日本で言えばまさに帝国軍隊の様相、これが1980年代・1990年代のこととは信じられない。韓国のことはあまり出てこないが、南ではソウル五輪があった頃。軍隊の中でお互いに備品を盗むところなどは、日本の軍隊とまったく同じ。中国への脱北の様子についても多く記述がある。

北朝鮮と言えば、金日成から金正恩までの政治体制だとか、ミサイル発射、それから拉致の話ばかり。本書の話は20年以上前のことで今は分からないけれども、すぐそばでこういう苦しい生活をしている人々がいるということを、事実上ないこととして暮らしていていいものだろうか。話者も飢えが一番苦しいと話していた。物資不足自体が政治体制にも原因があるといえ、基本的な食糧供給だけでも援助できないだろうか。[J0094/200930]