副題「コロナ治療薬とワクチン」、中公新書、2022年。

第1章 パンデミックは続く、変異も続く
第2章 ワクチンの基礎知識
第3章 ワクチン開発物語
第4章 ワクチンをめぐる「困った問題」
第5章 日本のワクチンはなぜ遅れたのか
第6章 治療薬への期待
第7章 医療逼迫はなぜ起こったか
終章 コロナ禍の終わりに向けて

日本では2020年の春から本格化した、ここまでの新型コロナウイルス(CoV-2)との戦いを総括する一冊。なんだかんだ、このスピードでワクチンを開発して、普及させることができたのは科学の成果であると。たしかにジェンナー以来の医療史・医学史を広く眺めれば、おのずとそうした感想は湧いてくる。

このパンデミックに、「未曾有の事態」と危機を煽るような発言であったり、陰謀論が跋扈して、何が真実であるかという感覚自体に揺らぎを感じさせる言説が横行するなかにあって、1936年生まれの著者のセンスには、古くさくも、なにか安心感を与えてくれる「健康さ」がある。SNS以前の感覚、それも大事だなと。

[J0272/220613]