マガジンハウス、2020年。

第1章 出自の謎―光秀が生まれた戦国の世とは?
第2章 空白の十年の謎―光秀、放浪する!
第3章 転機の謎―光秀、信長に認められる!
第4章 出世の謎―使命感とプレッシャーに苦悩する五十代
第5章 本能寺の変の謎―光秀、信長を討つ!

2020年大河ドラマ「麒麟がくる」に合わせて出版された、歴史学者によるコラム的な明智光秀の解説書。本郷さんが研究者としてどれほど信用できる人なのか判断する能力は僕にはないが、きっとちゃんとした歴史学者さんなのだろう。研究者にとって、ポピュラーな一般書を書くことはけっこうリスキーなことでもあるのだが、こうして読みやすくおもしろい解説書を出してもらえるのは、読者側としてはありがたい。統一的な描写を提示するというより、細かなテーマを並べたコラム式の記述なのが成功しているのかな。そしてまた、本能寺の変にせよ、光秀や信長にせよ、やっぱり興味の尽きないテーマなのよね。

本郷さんが描いている光秀像は、まじめなハードワーカー。それが本能寺の変の動機となったかどうかは別として、信長にどんどん取り立てられて、プレッシャーに苛まれながら生きていたと。「どんな動機があったにせよ、信長を殺すことで初めて自由になれたのかもしれませんね」(196)とのこと。

[J0296/220917]