岩波現代文庫、2023年、原著2003年。

役割語の世界への招待状
第1章 博士は“博士語”をしゃべるか
第2章 ステレオタイプと役割語
第3章 “標準語”と非“標準語”
第4章 ルーツは“武家ことば”―男のことば
第5章 お嬢様はどこにいる―女のことば
第6章 異人たちへのまなざし
附録 役割語の定義と指標

役割語研究の嚆矢というべき一冊が、今回文庫化。じつは、役割語研究のあれこれを読んだり、同著者編『〈役割語〉小辞典』は買ってあったりと、楽しい主題だと見知ってはいた界隈だが、この最初の本については未読だった。実際に読んでみてびっくり、たんに楽しい話題提示には終わらない、一級の研究書ではないですか。

ステレオタイプの動態と関連づけるところ、役割語の観点から〈標準語〉を捉えなおすところ、気づかれずにきた歴史的な経緯のあれこれ、等々、役割語研究の嚆矢にして、その視野の広さ・網羅性。ひとつの魅力的な研究領域を切り拓いて、後の諸研究に対しては灯台のような位置にある。本として、読みやすくとっつきやすいところも凄い。脱帽。

[J0389/230810]