松田聖子のデビューが1980年。彼女といえば、当時のアイドルという存在の大きさや、テレビを中心にした芸能界のしくみも含めて、今は歴史となった「時代」そのもの。松田聖子を見いだしたプロデューサーによる回顧録。新潮新書、2022年。

序章 運命のカセットテープ
第1章 父親の許しをもらうまで
第2章 決して偶然でなかった出逢い
第3章 難航するプロダクション探し
第4章 デビューのための上京
第5章 スターへの階段
第6章 松田聖子は輝き続ける
アルバムとシングルについて

松田聖子こと蒲池法子が最初、これほど純朴で、これほど期待されることもなく、デビューすることにすら難航したとは知らなかった。著者の若松氏ひとりだけが蒲池の才能を信じていたとのこと、これが誇張でないとすれば、彼の功績はたしかに偉大である。

デビュー曲は筒美京平に依頼したが、多忙のため断念してできたのが小田裕一郎による「裸足の季節」だったのこと、これが松田聖子という唯一無二のアイドルが生まれるはじまりになったと思わざるをえない。なお、筒美京平は中森明菜にも楽曲提供がない。

本書後半のセクションは、50ページ以上にわたってシングルやアルバムごとの解説で、これはきっと聞きながら眺めれば楽しい。資料になるこのセクションがあるせいで、読了してもブックオフ行きにはできないな。

しかし、なにもこれ以上付けくわえる必要もなかった輝かしい「松田聖子ストーリー」だったのに、沙也加ちゃんのことが起きてしまったのは悲しすぎる。そんな蛇足はいらなかったのに。

[J0474/240604]