副題「相対主義と普遍主義の問題」、ちくまプリマー新書、2022年。

第1章 「人それぞれ」論はどこからきたのか
第2章 「人それぞれ」というほど人は違っていない
第3章 「道徳的な正しさ」を人それぞれで勝手に決めてはならない
第4章 「正しい事実」を人それぞれで勝手に決めてはならない

これはすばらしい一冊。

簡にして要を得、たいへん読みやすい。/「正しさは人それぞれ」という現代社会に蔓延する見方を、つまりリアルな問題を正面から取り扱っている。/著者の専門のフランス哲学を、それありきで語るのではなくて、議論の必要に応じて効果的に紹介している。/たんに倫理学における価値相対主義だけを取り上げているのではなく、より一般的な構成主義的認識論の再検討とともに議論を進めている。/近年の進化心理学や進化倫理学にも言及している。本著著者には『認知哲学』という著書もあるらしい。/科学論のところは、いわゆる理系の研究者にとっても啓発的なはずだ。/マルセル・ガブリエルの哲学の意義を平易に説明。

達人の域。

[J0485/240713]