インターナショナル新書、集英社、2021年。

第1章 幽体離脱体験
第2章 夢のお告げ
第3章 神通力、予知、テレパシー
第4章 アメリカ・イギリスの神秘主義と幽霊
第5章 イギリス心霊現象研究協会と帰国後の神秘体験
第6章 熊楠の夢
第7章 親不孝な熊楠
第8章 スペイン風邪、死と病の記録
第9章 幽霊や妖怪の足跡を追う
第10章 水木しげる『猫楠』と、熊楠の猫

一見とっぴなテーマに見えて、等身大の熊楠がしっかりとした文献調査に基づいて描かれている良書。当時のイギリスのスピリチュアリズムや心霊研究の様子を手軽に知ることができるという意味でも薦められる。上から分析をふりかざすでなく、ただエピソードを並べるだけでもなく、熊楠と待ち合わせて散歩をしているような、記述の速度がちょうどいい。

水木しげる『猫楠』のほか、キックボクサーマモル的な伝説の連載『てんぎゃん』にまで言及があるのは、著者とおなじジャンプ世代としてはにやりとするところ。そうそうあの頃、熊楠ブームがあったんだよなあ。河出文庫の熊楠コレクションが出版されたのもそう。

[J0138/210219]