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鈴木貫太郎『ルポ 日本の土葬』

副題「99.97%の遺体が火葬されるこの国の0.03%の世界」、宗教問題、2023年。

第1章 大分県イスラム土葬墓地問題
第2章 ムスリムが土葬を望むわけ
第3章 日本の「伝統」としての土葬
第4章 土葬に必要な手続きとお金
第5章 それでも反対する人々の心理

最近出た「土葬ルポ」としては、高橋繁行『土葬の村』(講談社現代新書、2011年)があり、そちらの方は民俗的な土葬の風習を追った一冊だった。こちらの鈴木本は、大分県日出町(ひじまち)のイスラーム土葬墓地建設をめぐる対立を中心に扱いながら、現代日本の土葬事情を辿るという一冊になっている。

「体当たり取材」という感じで話題はあちこち飛ぶが、やはり土葬がマイナーである日本の現状がよく分かる。高橋本で取り上げられていた奈良県大野町も訪ねているが、当地でも土葬文化はほぼ絶滅といったようすだ。

岡山県哲田町(現・新見市)において、神葬式で父親の土葬を行った神主さんの話、それが当地の風習なのか、埋葬してから八年後、満月の夜に墓を掘り返して父親の死体と対面したというエピソードもなかなか強烈。高橋本に出てきた土葬の風習の中でも、三重に「お棺割り」というのがあったけれども。

メインとなっているのはイスラーム信者の土葬墓地の確保問題であるが、在日のムスリム・ムスリマが困っているところ、キリスト教や仏教の宗教者の中から彼らの土葬墓地をなんとかしてあげたいという協力者が現れていることが印象的。

「この問題には、おおむね3つの難題が内在している。第1は「墓地の新規建設」。第2は「土葬という葬送方式」。そして第3は「イスラム教」である」(149)。つまり、墓地建設反対者は、イスラームに対する忌避感から墓地に反対しているとはかぎらないという。

[J0361/230505]

高橋繁行『土葬の村』

講談社現代新書、2021年。

第一章 今も残る土葬の村
第二章 野焼き火葬の村の証言
第三章 風葬 聖なる放置屍体
第四章 土葬、野辺送りの怪談・奇譚

新書っぽくないテーマのルポルタージュ、実は現代にもまだ土葬や土葬をめぐる民俗があるという事実、そして民俗学者でもなさそうなのに、それを何十年も追う著者の情熱と、驚くポイントも多い本。残っていた土葬の風習もここ数年で急激に減ったというが、それでも簡単に「もういわゆる古い民俗など残ってない」などと諦めるべきでもないのだな。実際の葬列の写真などもいくつも所収。

場所は、奈良盆地の東側の山間部と、隣接する京都府の南山城村とのこと。廃仏毀釈で有名な、あの十津川村の神式埋葬の報告もある。三重県伊賀市島ヶ原の「お棺割り」すなわち四十九日に墓をあばく風習だったり、死亡した妊婦の胎児分離の風が死体損壊罪に問われた例だったり、なかなかえげつない記述もあり。

本書にも触れているが、東日本大震災で火葬が追いつかず、一度は土葬をしたもののの、故人に申し訳ないという感覚から再度土葬をしたというのは、よく知られているエピソードである。それが、土葬が当たり前の大安村では「焼かれるのはかなわん」と(56-57)、風葬が当たり前の与論島では「土に埋めるのは、犬や猫じゃあるまいし」という言葉を聞いたとか(198)、なるほど。

[J0143/210309]