副題「ソシュール フロイト ヴィトゲンシュタイン」、新曜社、シリーズワードマップ、1990年。なんだかんだ、概説としては有益だと思う。現代言語学の三つの視点を、言語使用論的視点(ヴィトゲンシュタイン)、記号論的視点(ソシュール)、精神分析的視点(フロイト)と整理し、小項目を立てて解説。

現代言語論の三つの視点
Ⅰ システム・構造としての言語
 記号/ソシュール/共時態と通時態/サピア/意味/バルト/グー/戯れ/ブレンダル/イェルムスレウ/固有名詞
Ⅱ 無意識としての言語
 フロイトと言語/無意識/アナグラム/クリステヴァ/セミオティックとサンボリック/精神分析と言語使用論
Ⅲ 行為・コミュニケーションとしての言語
 ウィトゲンシュタイン/交通/オースティン/対話/ヴァレリー/バンヴェニスト/デリダ サール論争/手紙/約束/誘惑
現代言語論のためのブック・ガイド

文章のそこここに、当時のニューアカ的・衒学的な雰囲気が濃厚に漂っている。なんていうのか、今からみれば、ロマンティックとでもいうべき自己陶酔の感じ? 引用されている漫画が、内田春菊と相原コージという、この感じ。あと、終盤の著者(立川氏)自身による誘惑論の部分が宙に浮いている。この二点をのぞけば、解説自体はちゃんと端正でリーダブル。人の説明も、当時っぽい人選かもしれないが、ありがたい。

ウィトゲンシュタインの引用(160)。
「きみは、言語ゲームがいわば予見不可能なものであることを心にとめておかねばならない。つまりそれには根拠が無い。それは理性的ではない。それはそこにある――われわれの生活と同様に」(『確実性の問題』559節)。

バフチンの、記号論および構造主義がよってたつモノローグ主義に対する批判。
「「構造主義には、一つの主体――研究者当人――しか存在しない」。しかし、意味はつねに人称的なのであり、問いかけや呼びかけ、そして予想される応答を前提としてのみ考えることができる」(181)。

[J0673/260629]