副題「女坑夫からの聞き書き」、岩波文庫、2021年。原著は1961年刊。
女性が締め出される以前、筑豊の炭鉱で働いていた女性坑夫たちの聞き書き集。
女性史、さらには生活史といったジャンルが確立する前の、方法論に頼らない、ふつふつとした熱いものの感触。そうした諸ジャンルの原点に置かれるべき仕事。

無音の洞
流浪する母系
棄郷
灯をもつ亡霊
のしかかる娘たち
セナの神さま
ヤマばばあ
赤不浄
共有
地表へ追われる
坑底の乳
付録 聞き書きの記憶の中を流れるもの

死の危険と隣あわせの厳しい肉体労働という即物的な世界に、神仏への信仰の話が入ってくる。しかもそこには、信心に頼る心と、それに対して自らだけを恃む姿勢とが、入り混じる。両者のあいだに、むしろそれは当然というように亡霊の話も現れる。

傾聴に徹する生活史の研究者というのはちがって、話り手のたたずまいを描く森崎の忌憚のない筆致もたいへん印象的。張りつめた緊張感は、『あいたくてききたくて旅に出る』における小野和子さんの昔話採集を連想させる。

[J0665/260527]