副題「現代思想との対決」、ヨベル新書、ヨベル、2023年。SNSで逝去の報とともにたくさんの著作の情報が流れてきて、こんな本も書いておられたのかと一読する。これまでの著者の仕事を総括した『キリスト教思想史の諸時代』という壮大なシリーズの鴟尾をかざる第七巻。

1 世俗化とは何か
2 解体の時代
3 ワイマール文化と現代思想
4 大衆化現象の問題
5 水平化と実存思想―キルケゴールの戦い
6 実存主義との対決―実存概念の批判的検討
7 現代のキリスト教神学
8 ヒトラーのファッシズムとの対決―ボンヘッファーとヴェイユ
9 ヨーロッパのニヒリズム
10 世俗化社会との対決
付論 現代の経済・政治倫理批判

正直、宗教社会学における世俗化論を扱った『近代人の宿命とキリスト教』は、諸理論をならべた研究ノートのような内容であまり評価していないのだが(実際、講義ノートが元らしい)、こちらの本の方が、著者自身の見方がはっきりと示されている。

著者の世俗化/世俗主義の認識はゴーガルテンのそれに則っている。つまり、キリスト教思想の展開としての世俗化がいつしか、悪しき世俗主義に変質し、無神論やニヒリズムの台頭を生んだと。
もうひとつ、著者はブーバーの『我と汝』を非常に高く買っていて、ヨーロッパの個人中心主義を克服する思想だと位置づけている。

21世紀風の「批判的」観点からはほど遠く、選んでいる思想家やそれを並べるしかたは古色蒼然ともみえなくもないが、実際に読んでみると、近代の個人中心主義の問題など、そこで語られている問題はけして過去のものにはなっていない。

付箋を貼った箇所。
「この住居を失い疎外された現実をマルクスはプロレタリアートという社会的例外者のなかに、キルケゴールは単独者という例外者的実存のなかに見いだし、ヘーゲルの思想体系を徹底的に解体するようになった。この解体の時代に現代の哲学は主として三つの方向をとったといえよう。(1)フォイエルバッハによる人間学的還元、つまり人間学への解体。(2)マルクスによる社会学的還元、つまり弁証法的唯物論への解体。(3)キルケゴールによる実存的還元、つまり実存哲学への解体」(42-43)。
これは著者独自の整理か、それとも元ネタがあるのかどうか。
Copilot にきくと、岩崎武雄『西洋哲学史』(有斐閣)、岩崎允胤ほか編『西洋哲学史概説』(有斐閣)、杖下隆英ほか『テキストブック西洋哲学史』(有斐閣)あたりがそうだというが、実際に見てみないと怪しい。

岩崎武雄『西洋哲学史』(有斐閣)の整理法はちがうな、たぶん。こちらはこちらで学ぶべきだが。
https://dl.ndl.go.jp/pid/12223496/1/123

[J0657/260413]