トレルチの理論を要領よくまとめた本はないものかと思うのだが、これがなかなか難しい。神学、社会学、歴史学などと分析視点も多いし、なんせ著作や論文が多い。トレルチ自体を十分に読み込んだ上でのことではないので、研究書を評価する軸もできていないのだけど、メモ代わりに。ちょっと探してみた一番の結論としては、日本語版のトレルチ著作集全10巻の存在は本当ありがたいということだったりする。
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エクハルト・レッシング『トレルチの思想:その歴史哲学をめぐって』(佐伯守訳、日本YMCA同盟出版部、1975年、原著1965年)
第一章 歴史と形而上学
第二章 歴史と先験論
第三章 歴史と直感
結論
レッシングがトレルチの思想を消化しすぎてしまっていて、トレルチのどのテキストに典拠があるのかとかが分からない。歴史哲学という角度から、ある程度トレルチを読んでから読むか、逆にまったく読まずにレッシングの解釈に頼るか、そういう読み方だったらいいのかな。
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H.E.テート『ハイデルベルクにおけるウェーバーとトレルチ』(宮田光雄・石原博訳、創文社、1988年)
第1章 二人のハイデルベルクの学者のプロフィールのために
第2章 プロテスタンティズムと資本主義との関係
第3章 プロテスタンティズムと近代世界
第4章 ウェーバーとトレルチとの比較
第5章 総括と展望
補章 福音主義的社会倫理にたいするエルンスト・トレルチの意義
付論 一人の神学者の歩んだ道
マックス・ヴェーバーとの関係も、トレルチの一部でしかないけれども、外せない一部であるのは確かだ。ただ、たとえば西村貞二『ヴェーバー、トレルチ、マイネッケ』(中公新書、1988年)のように、当時の状況やエピソードを中心に描かれても(新書だからスペース的にもしょうがない!)、それはそれで意味はあると思うが、トレルチの思想の理解という目的に対しては間接的な情報でしかない。テートのこの論文集は、その意味ではバランス良く、両者の理論内容に踏み込んだ記述も多い。
フリードリヒ・グラーフ『ハルナックとトレルチ』(近藤正臣・深井智朗訳、聖学院大学出版会、2007年)も、どちらかというと、トレルチ思想の理解というよりは、当時のドイツの知的状況の把握の方が主。
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フリードリッヒ・ヴィルヘルム・グラーフ『トレルチとドイツ文化プロテスタンティズム』(深井智朗・安酸敏眞訳、聖学院大学出版会、2001年)
・序論
・文化プロテスタンティズム
・「ゲッティンゲンの小学部」の「体系家」
・宗教と個性
・エルンスト・トレルチ
・マックス・ウェーバーとその時代のプロテスタント神学
こちらは論文集で、講義録であった『ハルナックとトレルチ』より、特定の主題についてカチッと論じている。ただ、もちろん、これ一冊を読めばトレルチ思想の全体像が分かるという種類の本ではない。
[J0096/201004]