副題「わかりにくさの理由を探る」、平凡社新書、2014年。前半と後半とでかなり内容がちがっており、前半は科学リテラシーの話、後半は進化論をめぐる誤解の話で、それぞれで有益。著者は進化論関係の本を多く訳している翻訳家で、きちんと読んでおられる感じが伝わってくる。

◆第Ⅰ部
第一章 科学的コミュニケーションを損なう要因
 一 科学者の側の誤った情報発信
 二 受け手の問題
第二章 騙されやすさは人間の本質──知覚の落とし穴
 一 比喩的表現の功罪
 二 感じたことが事実とは限らない
第三章 複雑な現象の理解は簡単ではない
 一 条件反射的思考の弱点
 二 確率的事象の世界
 三 統計の嘘
◆第Ⅱ部
第四章 誤解されるダーウィン──進化論再入門
 一 ダーウィンの狙い
 二 いかにして進化するか──自然淘汰の発明
 三 進化論vs.社会進化論
 四 ダーウィン革命とは何だったのか
第五章 「利己的な遺伝子」をめぐる誤解
 一 なぜ批判されたのか
 二 「遺伝子」とは何か
 三 ミームの可能性

メモ。
「進化における突然変異の役割が強調されるようになるのは、1900年のメンデル遺伝学再評価以後であり、遺伝学的な観点からダーウィンの漸進的な進化に懐疑的だったユーゴー・ド・フリース[1848-1935]は、1901年に、遺伝子の突然変異による新種の形成こそが進化の要因だとする「突然変異説」を提唱し、ここではじめて、突然変異を表す用語としてmutationを使ったのである」(135)。「興味深いのは、『種の起原』でmutationという言葉が10回使われていることだ。しかし、すべて単純な変化や変動という意味でしかない」(126)。

「エルンスト・マイヤーはダーウィンの進化論が五つの異なる理論に分解できることを指摘している(Mayr,1985)。すなわち、①世界は不変ではなく、種は変化し、進化しているという理論 ②近縁種は「共通の由来」をもち、一つの祖先種から分岐したものである ③進化は跳躍によってではなく漸進的に進化する ④種数の増加(地理的種分化) ⑤自然淘汰 の五つである。この五つはダーウィンの進化論のなかでは一つに統合されていたが、『種の起原』刊行以後の数十年の進化論ブームで広く一般に受け入れられたのは①と②だけだった」(153)。

ダーウィンやドーキンスの思想の説明については、再読の価値がある。

[J0678/260713]