Category: Japanese Articles

関根達人『列島横断 日本の墓』

副題「失われゆく墓石を訪ねる」、吉川弘文館、2025年。

プロローグ お墓を訪ね歩く人と失われゆく墓石
墓と墓石の歴史 墓石の誕生から軍人墓まで
両墓制とは 埋め墓と詣り墓
多様な近世大名墓 権力と身分秩序の象徴
個性的な江戸時代の墓石
北の墓 アイヌ墓と蝦夷地の和人墓
南の墓 洗骨と再葬

オールカラーで多くの写真を掲載した全国のお墓のガイドブックだが、著者は墓石の歴史学研究の第一人者だけに歴史的背景もよく分かる有益な書。著者のフィールドのひとつということもあり、松前をはじめとする北海道の墓にも比較的手厚いところも特徴。税込み2420円はお買い得。

[J0611/251101]

長岡龍作『日本の仏像』

副題「飛鳥・白鳳・天平の祈りと美」、中公新書、2009年。

序章 仏像を造るとはどういうことか
第1章 聖徳太子のために造られた仏像
第2章 生身という思想
第3章 釈迦に出会う
第4章 仏はどこにいるか
第5章 天の働き
第6章 国土を法界にする
第7章 救済のかたちと場所
終章 重ねられる祈り

古代の仏像を細部にわたって考証し、当時の人びとの心象世界にまで迫る。本書を読んで、古代の仏教世界が中世以降のそれといかにちがっているか、また自分がどれだけ「仏教」にかんする現在のイメージで古代のそれを判断してしまっているかに気づかされた。「古代の人々の前には、仏教と神仙思想は一体となってあった」(110)という言い方も、なるほどそういえばと。

ついつい現存する仏像や寺院でものを考えてしまうが、失われたものも多い、なんなら失われたものの方が多いということについても、あらためての気づき。天平時代に天智天皇がつくった大安寺釈迦如来像がとても尊重されていて、生身の釈迦に比されていたというような話など。四天王の役割の時代的変遷の話も興味ぶかかった。

図版として紹介されていた大阪・長円寺の十一面観音像が印象に残った。いつかみてみたいな。

[J0610/251031]

堤邦彦『日本幽霊画紀行』

副題「死者図像の物語と民俗」、三弥井書店、2020年。
収めている幽霊画に逸品が多い上に、文献のみならず現地調査に裏付けられた論考の内容も水準が高く、出版物としてすばらしい。150点ものカラー図版を収めているのだけど、個人的に、文章ページと図版ページが同じ紙質で、つるつるでない紙を使ったこういう本が好き。

第1章 寺と幽霊画
 高僧絵伝から幽霊画へ―死者救済の思想と図像化
 子抱き幽霊図の原風景―産死供養の図像
 円山応挙伝説考―幽霊画をめぐる「物語」の成立
第2章 血族の証明
 幽霊画の秘密―金沢・鶴林寺
 失われた絵の帰還―会津市松沢寺
 奥州四十九院家の記憶
第3章 寺蔵幽霊画を巡る旅
 みちのく幽霊画紀行―呪具としての死者図像
 幽霊画のまち―弘前市禅林街
 御用絵師の女霊救済
 薄幸の女霊図―丹後夕日ヶ浦
 「産女の幽霊」を祀る―長崎光源寺
第4章 幽霊画と江戸怪談
 江戸はなぜ女霊の時代となったのか―後妻打ち怪談をてがかりとして

幽霊画にも地方性があるらしく、とくに北東北は幽霊画の宝庫だという。津軽などでは富裕層に幽霊画を魔除けとして置く風習があったという。ねぷた絵と幽霊画の関係性の話もおもしろい。
弘前市のギャラリー森山では八月に幽霊画を集めた「ゆうれい展」をやっているらしく、ぜひ一度行ってみたい。https://www.instagram.com/gallery_moriyama/

収められている幽霊画も迫力のあるものが多いが、長崎市光源寺にある産女の幽霊の木像というのも凄いインパクト。

巻末には、全国の寺院所蔵幽霊画一覧がついている。

[J0609/251018]